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『危険なプロット』
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2013.10.24

   
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原題:「仏・DANS LA MAISON / 英・IN THE HOUSE」

◆あらすじ◆
作家になる夢を諦め、高校の国語教師として退屈な日々を送るジェルマン。生徒たちのつまらない作文の添削にもすっかり辟易していた。ところが新学期を迎えたばかりのある日、彼はクロードという生徒の作文に心惹かれる。その文章に可能性を感じたジェルマンは、彼の個人授業に乗り出す。ジェルマンの指導で才能を開花させたクロードは、クラスメイトの家庭を題材に、ますます魅力的な物語を紡いでいく。ジェルマンは他人の生活を覗き見るその背徳的な物語にためらいつつも心奪われ、いつしか“続き”を待ちわびずにはいられなくなっていくが…。


※スペインのフアン・マヨルガ作の戯曲『El chico de la ultima fila(最後列の青年)』を基にフランソワ・オゾンが脚本を執筆。撮影はジェローム・アルメラス。2012年度セザール賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、有望若手男優賞、脚色賞、音楽賞にノミネートされている。

と言う事で、楽しみにしていた今作を観て参りました。
オゾン作品は実はこの所見逃していて「ぼくを葬る」以来だが「ぼくを葬る」がかなり好きだったので或る意味近いトーンでの作品で今作も凄く楽しめた。
手玉に取られ系作品す。 完成度かなり高いですわ。

オゾン監督らしいウイットに富んだ感性を織り交ぜながら人間の中に潜む皮肉や些細な悪意、そして自分では気付かぬうちに嵌まり込んで行く心理を軽いサスペンス仕立てで映し出して行くその技巧にやられた。シーン毎に使われる音楽も効果的だ。


授業の一環で提出を課した「作文」の中にひとつの才能を見い出した国語教師。危険な内容だと思いつつも「続く・・・」の文字に些細な欲望が生まれる。自分に「少年の才能を育てる」と言う大義名分を掲げ放課後の個人授業に没頭して行く。
初めは少年への指導と言う優位な立場を保つがそれは次第に形だけのものになる。自分の心理状態を把握出来なくなるまでに教師は少年の存在とその文章にのめり込んでしまう。

時が経つにつれ文章指導と言う形はもはや上辺だけのもの。その「プロット」は人間の根底にある「覗き」と言う欲求に深く捻じ込まれていく。毎回文章の最後に付けられる「続く・・・」の文字に翻弄されいつの間にか教師は少年の言いなりにルールさえ犯す展開に・・・。


人間の中にある「知りたい」欲求と「他者」への興味と言う欲の根源みたいなものへの危険性を感じた。(或る意味ストーキングみたいなもの)
だからこそ紙面上の虚構と現実の境界線が曖昧になる瞬間にドキッとする。少年は「実際にその家に行かないと書けない」と主張するがそれが本当なのか否かと言う点も怪しい。そして教師同様、いつの間にか自分(観客)もその「プロット」にのめり込んでしまっているのだ。

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立場の逆転や人生の転落(この手の話しは大好き)が器用に織り込まれ更に生活を取り巻く情報過多の中でこの少年の興味は物凄くシンプルと言う、人間の複雑さと単純さがかなり上手い具合に描かれている。
転落と言う観点においてこの教師が一番勘違いしていた点はこの「プロット」は自分(と妻)以外読んではいないと言う事に甘んじ、自分が一番懸念していた「他人に知れる」=「読まれる」行為だけではないと言う事に気付かなかった事。そして少年が描いた道筋の先にぽっかり開いた大きな落とし穴を注意深く見つけられなかった事だ。
そう、自分にとっては虚構の世界だったものが現実になり自分も巻き込まれている事に気付いた時にはすでに人生は狂い始めていると言う恐ろしさを掲示している。もちろん修復不可能だ。

そしてサスペンス仕立てだと書いた理由に「先が読めない」と言う点が挙げられる。
少年が書き続ける「プロット」は一体何が目的なのか?と言う点だ。通過途中に幾つか目的めいた事が挙げれられていくが映画が終盤にさしかかった頃に「もしや?」と言う一文が投げられる。そしてエンディング・・・なるほど、これぞオゾン流サスペンスだと思わされるわけだ。実際はサスペンスか?と言うとそうではない。斬新と言うか新感覚と言うか新手と言うか・・・完全に監督は先を走ってるなぁと感じた。でも官能的な描写も忘れていない。何と言っても「プロット」の中ではこのクロード少年は老け専宜しく大したマダムキラーだ(笑)で、最終的に老け専は合ってたらしいけど・・・。


まぁ、細かいところを言えば教師の奥方が任されている画廊の展示物があまりにもエロ可笑しくてこう言う所の皮肉さはさすがって思った。ついでに言えば美術や文学に勤しむ事は人格形成に何の役にも立たないなんていう台詞の攻防も面白い。

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劇中やたらに出て来る中国人の件もまさに【今】(中国人のボルドー・シャトー買収とか?)を表しているとも言える。

そんなフランスの芸術、世情の裏事情なども織り交ぜつつ監督が最後に持ってきたシーンはちょっと背筋に鳥肌が立ちそうな程【してやったり】なシーンだった。少年が時々見せるあの不敵な笑いが脳裏に焼き付いてる。美少年恐るべし!だ(笑)

【秋深き 隣は何をする人ぞ】

まさしくこの芭蕉の句の様なシーンで幕閉じでした。

そして初めから目的を果たす為に自分の才能をフルに活用する事に務めた彼のプロットはまだまだ「続く・・・」のであります。



❤❤
てか、あの冒頭にクロードが制服に着替えるシーンは何とも言えず良い。
臍から下が見えるのか?見えないのか?みたいなささやかな期待感を持たせてくれる当たりの微妙な映し方が「監督やるじゃん!」的なネ(笑)

あっ、でもエルンスト・ウンハウアーくんは決して好みでは無いです。一応・・・


でも一見の価値あるよこの映画。是非どうぞ。


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